俺はかつて奴隷海岸であったケープコーストのバーで酒を一人で飲んでいた。
この町の連中は海岸を歩いているだけで「出てけ！」とわめき散らしてくるやつがいる。そんなとき俺は「海はみんなのもんだ！」と小学生のように応戦していた。写真撮るなと怒ってくるがやはり「海はみんなのもんだ！」でやり返す。
人種差別された歴史があるから人種差別しているのだろうか？そういう人も中にはいるのだろうけど理由はきっと違う。のぐそをしたいからなのかもしれない。よく見ると女性なんかも平気でのぐそをしている。海岸は人糞だらけで町中匂いがひどい。海風に乗りのぐその匂いがする、さすがアフリカの海辺の町だ。そんなところをカメラを持ってうろうろされたくはないのかもしれない。
俺の隣で酒を飲んでいたガーナ人達がなにやらもめていた。大きな声でわめきいまにも胸ぐらでもつかんで殴り合いが始まりそうな雰囲気だ。「女でも寝取ったか？」そう思いながら横目で見ていたら俺に話しかけてきた。「ミスター、5メートルとはどのくらいだ？」一瞬質問の意味が分らなかった。「へ？、、、俺からあの白い壁くらいまでかな？」「そうだよな」と俺に聞いてきた男がいう。すると他の男が「いやそんなことないだろう！５メートルはもっと長い！」そう彼らは5メートルの長さがどれくらいか話をしていただけだった。
アフリカではよくじゃれてるのか喧嘩してるのか分らないときがある。
5メートルがどれくらいかであれだけ盛り上がれる彼らをうらやましく思いつつ、たまにしかカウンターに姿を現わさない無愛想なバーテンダーの入れるアブサンのストレートを飲みながら、ガーナの夜を楽しんだ。
写真はかつて奴隷が運ばれる前に隔離されていたという洞窟。もうそのまんま残っているという感じで体の具合が本当に悪くなって長く入っていられなかった。壁には匂いが染み付いていた。
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