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inReachの機能などを解説【登山におすすめ】

inReachとは遭難したときにほぼ世界中どこからでも助けが呼べる衛生端末だ。カナダのユーコン準州でツアーガイドをしているときに使用していた。登山や旅の途中の遭難に活躍するアイテムなので、必要な環境に身を置くのならば常備することをおすすめする。

 

inReachはアメリカのメイン州に本社を置くDeLorme社がつくる衛星端末。

私がカナダで購入した 2013年当時では日本では販売されていなかったが、最近アマゾンを見たらしっかり販売されていたので、日本でも入手が可能となっている。

衛星携帯電話を知っている人は多いと思う。この衛星端末は通話こそできないが、ひと月30米ドル程度を支払うだけで、世界中のほぼどこからでもSOSボタン一つで救助を呼べ、さらにメールの送受信ができるというアイテムだ。

 

※この情報は2013年11月時点において、Delorme社のHPを閲覧したり同社の担当者からの情報を日本語にして解説したものであり、間違った解釈や誤訳、情報が変更している可能性があります。

あくまでも参考程度にお使いください。ご自身で購入され使用される方はご自身で情報を確認してから使用されるようにしてください。

Delorme社HP リンク アクセス日:2013/11/01(Delorme社は2016年にGarmin社に買収されているためGarmin社のHPが立ち上がります。本文では全てDelorme社と記述しています)

 

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inReachの機能

見たことはなくても衛星携帯電話を知ってる人は多いだろう。24とかでテロリストがよく使用しているあのごついヤツだ。

携帯端末から無線電波が衛星に飛び、そして地上に戻ってきた電波が地上の電話回線につながり通話が出来るというもの。世界中どこからでも空が見えるところであれば通話が可能という代物だ。

しかし毎月契約料だけで最低50米ドルはかかり、また通話料が一分あたり1〜1.5米ドル程度と金が結構かかるのが難点となっている。

 

そして私がカナダで購入したのが、通話は出来ないがSOSで救助を呼んだり、メールが送れるというinReachだ。

SOSボタン一つでヘリの救助を呼ぶ事ができ、そして世界中の携帯電話とショートメッセージの送受信ができ、さらにEメールアドレスでもメッセージの送受信が可能という代物だ。

 

値段はカナダのバンクーバーで購入した時は319カナダドルで、月の契約も約15米ドルからとなっていた(アマゾンをみたら49,843円だった)。

使用しない月は契約を一時中断することも可能なので衛星携帯電話に比べると所有しやすい。私はちなみに月約30米ドルを支払い100回無料でメッセージを送れるプランにしていた。101回目からは1回につき50セントが自動的にクレジットカードから引かれる仕組みだ。

たったそれだけのコストで、世界中どこにいようが、砂漠のど真ん中でも、アマゾンの奥地でも、アフリカで狩猟中でも、友達や家族にメッセージが送れる。そしてなによりも、地下に監禁でもされない限り救助を呼ぶことが出来るのだ。

「keeps you in reach wherever you go」というのが宣伝文句になっている。つまり「どこでも圏内」ということだ。北極点から南極点のすべての範囲と謳っている。

 

inReachは使用できない場所もある

しかし、やはり使用できない場所もある。テロ組織や犯罪組織の利用防止や政治的理由により使用できない国があるということだ。気になったのでDelorme社にメールで問い合わせてみると以下のような回答を得られた。

 

世界中に衛星ネットワークは広がっていますが、アメリカ政府の規定に従い、製品とサービスの供給は以下の国々では禁止されています。


  • タリバンの支配下にあるアフガニスタン
  • キューバ
  • イラン
  • 北朝鮮
  • シリア
  • スーダン



なお、制限はおそらく予告なしに変更します。現地の領事館もしくは税関職員に確認することをお勧めします。上記の国々に渡航の際は御自身による下調べと救助の手配をしてください。

 

このような返事をもらった。もっと制限されている地域はあるのかと思っていた。

 

inReachのSOSボタンと救助の流れ

inReachに備わっている機能の一つがSOSボタン。冒頭に貼り付けたinReachの写真を見てもらいたいが、右下にあるボタンだ。このSOSボタンを押すことで救助が呼べる。とてもシンプルで分かりやすい。

 

これはメッセージのやり取りではなく完全に緊急時に使用するボタンとなっている。メッセージ機能だけでも自分なりにレスキューが呼べるわけなので、これを使用するときはよほどの緊急時に限られるだろう。

 

では、SOSボタンが押されると実際にどうなるのか、SOSボタンを押してからの流れを説明していく。

 

まず、少しややこしくなるのだがSOSシグナルを受け取るのはDelorme社ではない。GEOS社というアメリカの民間レスキュー会社となっている。そしてさらに正確にいうと実際にSOSシグナルを受け取るのは、そのGEOS社が保有しているIERCC(International Emergency Response Coordination Center)という機関になる。IERCCは世界中各地域の救助隊情報のデータを保有していて、24時間365日体制でSOSシグナルをモニタリングしている。

 

次に、SOSボタンが押されたら、契約者が自身で登録しておいた2人の緊急連絡先(契約時に2人登録することになる。途中での変更はもちろん可能)にIERCCが連絡を取り、間違ってSOSボタンが押されたのではないかという事実確認がなされる。このあたりはとてもサービスが行き届いている。


ここで少し話が逸れるが、地理座標という言葉になじみはあるだろうか。地理座標というのは、水平位置を表す経緯度と垂直位置を表す高度との組み合わせで表される位置情報のことだ。ちなみに私が住んでいたカナダユーコン準州の州都ホワイトホースのマウントシマエリアの地理座標はinReachからの情報では以下のように表示されていた。

 

  • Coordinates(座標): N60°43’ 48. 44’’ W135°5’ 55. 38’’
  • Elevation(標高): 2365ft


この情報を持っていれば、ヘリコプターはドンピシャリでその地点にやってくることが出来る。

 

そしてIERCCはこの地理座標を元に、近くにいる現地のレスキュー隊をデータベースから探し出す。

 

GEOS社は所有している契約者の個人情報や地理座標を現地のレスキューに伝える。

 

GEOS社は、契約者が登録している国以外にいる場合、契約者の母国の大使館に連絡をいれ、契約者の個人情報などを伝える。

 

GEOS社は最新の契約者の地理座標を現地のレスキューと大使館に更新し、そしてGEOS社がこれより先、契約者のレスキューの義務を負わない旨を伝える。

 

つまり、GEOS社の仕事はここまでとなる。ここまでがDelorme社との契約料に含まれているというわけだ。

現地のレスキューへバトンタッチがされたわけだが、もちろんそのレスキューにかかる金額はDelorme社との契約料には含まれていない(別途GEOS社のメンバー会員になると保険が適用されるなどの例外はある)。

 

ヘリコプターの相場をYahoo Canadaで検索して調べてみたが、一時間につき2,500カナダドルくらいだった。ヘリは何時間利用したかの時間でお金が計算されるようだ。

もしカナダでヘリに丸一日捜索されたら60,000カナダドルかかるということになる。

しかし、さきほどの地理座標の情報があれば丸一日捜索されることはまずないと言える。地理座標の情報を元にどんぴしゃりで救助に来れるのだから、数時間程度で救助されるだろう。

inReachを持っていれば確実に救助に来てくれるだけではなく、救助されるコストの心配もしなくていいのだから、実用性はかなり高いと言える。

 

現地のレスキューに関する情報が記載されていなかったので、Delorme社に聞いてみた。

試しに「東京とカナダユーコン準州でSOSボタンを押したと想定したら」という聞き方をしてみたのだが、残念ながら回答は得られなかった。GEOS社に直接問い合わせれば回答してくれるかもしれないので、興味があれば聞いてみてほしい(東京は現実的ではないということには後で気がついた)。

 

inReachのSOSボタンを誤発信したら

間違ってSOSボタン押してしまった場合は支払いの義務が発生する。そしてそれは「自分もしくは自分が権限を与えた人物によって起きた場合」と利用規約には書いてあった。

裏を返せば、第三者が使用した場合はセーフということだ。ただし、あまりにも自分に非があると認められた場合はこれに収まらないと思われるので、やはり注意は必要だろう。

 

SOSボタンが本当に作動するかどうか試しただけでももちろん駄目だ。Derolme社により誤発信であると認められた場合はGEOS社に契約者のクレジットカード情報を与え、そこに無条件で請求がくるということだ。

GEOS社への誤発信による支払い額は340〜680米ドルとのことだ。しかしこれは現地のレスキュー費用を含むものではなく、GEOS社から手間賃として請求される額なので、現地のレスキューがすでに発動してしまっていた場合は、費用はこれに収まらない。

 

inReachは救助コストが心配なら保険の加入も出来る

また、Delorme社との契約とは別にGEOS社と直接契約することも可能なようだ。GEOS社のメンバー会員になることで、年間上限1,000万円、一件につき上限500万円まで保険が適用されるとのこと。家族単位での加入と会社単位での加入がある。詳細はGEOS社GEOSのHPで確認してみてほしい。

 

保険が適用されない条件は以下の通りだ。

  • 天候が悪い状況での旅のスタート
  • 計画された旅を達成するのに不十分な準備、トレーニング、能力
  • 持病、慢性的な体調不良、精神障害者による自傷行為または自殺
  • 自然災害
  • 暴動、政情不安、内戦などの紛争、誘拐、生物兵器、核兵器、化学兵器による事件
  • 民間旅客機または管轄の航空当局に航空路線を与えられていない航空機の事故
  • 何かの戦争もしくは何かの軍事行動に参加している人間により発生させられた損害
  • 重火器の無免許使用
  • 資格を持つ人間抜きでのスカイダイビングやスカイサーフィン
  • ドラッグやアルコールによる怪我や病気
  • 他の保険会社もしくは第三社から支払われる金額

Delorme社のHPより)

 
二番目に「計画された旅を達成するのに不十分な準備、トレーニング、能力」とあるが、こういうのを補ってくれるから価値があるんじゃないかと思うが、このあたりはかなり曖昧だ。

保険の対象外の地域は以下の通りとなっている。

  • 北アフリカ
  • 中央アフリカ
  • 西アフリカ
  • イラク・イラン・アフガニスタンを含む中東諸国
  • ロシア

Delorme社のHPより)

 
しかし利用者はどのくらいいるのだろうか。そしてどんな人が契約しているかとても気になるところだ。

 

inReachのメッセージの送受信

inReachの最大の魅力ともいえるメッセージの送受信について解説していく。

 

カナダなどで暮らしていると、少し町から離れるとすぐに携帯が繋がらなくなる。私が住んでいたユーコン準州では、冬はマイナス40度にまで下がったりする地域なので、「何か事故があったらどうしようと」といつも考えていた。

日本でも登山される人などは同じような不安を抱えているかもしれない。しかし安心を得たくても、衛星携帯電話はかさばるし、金額も高く、ましてや契約しても一生使うことがないことのほうが確率が高いと思うと、個人で契約しようとはあまり思わないだろう。

 

その点、inReachは手軽に持つことが出来る。端末自体の費用も衛星携帯電話よりも安く、毎月の契約料も使用料も安い。そしてポケットに入るサイズというの持ち運びやすさも兼ね備えている。

かさばるものは、持ち運びたくなくなってしまうものだ。ついつい大丈夫だろうと置いていくことにもなりかねない。緊急時というのは当然予告なしにやってくるので、やはり持ち運びやすさというのは大事な要素となる。

 

また、衛星携帯電話は緊急時意外に使用することはほとんどないと思うが、inReachならメッセージを気軽に送ることができるのだ。

帰りを待ってくれている人にこまめに連絡することで、相手を安心させることも出来るだろう。これは実はとても大事なことなのだ。こまめに状況をシェアすることで、救助される確率はぐんと上がる。

 

また、旅などをしてると、その時に感じる感動だったり、ワクワクだったりを誰かと共感したくなる。inReachを持っていれば、その瞬間にそのときの感情を伝えることが出来るのだ。

私は旅をしている間は現地のSIMカードを購入して、携帯を使用していたが、繋がらないところも多かった。ましてや町から離れると全然つながらない状況ばかりだった。

 

さらに驚くべきことに、フェイスブックにも端末から直接投稿することができる。

例えばコンゴの森の中で小人族と狩りをしてる時に、サルを捕まえたとして、そしてその感動を共有したい時なんかでもその瞬間にフェイスブックにアップすることが出来るのだ。

誰かと旅をしている人ならいいが、一人旅の時にはものすごく感動を誰かに伝えたい瞬間というのがある。それを可能にしてくれるアイテムと言える。

 

ちなみに、送受信できるメッセージだが、残念ながらアルファベットのみの対応となっている。フランス語などアルファべットを使用する言語には対応しているが、日本語、韓国語、中国語なんかには対応していない。

 

そしてやはり、メッセージを送るだけでなく受け取ることもできるというのがこの端末の優れた点だろう。連絡が一方通行にならないのだ。

世界中どこにいようが、知り合いの携帯からinReachでメッセージを受け取ることが出来る。送り方は、一度inReachからメッセージを送っておけば、そのメッセージに返信するだけでOKだ。端末を持つ人間に「今どこにいるの?」といったメールを送ってあげることも出来るのだ。

 

費用の請求は端末の所有者にのみ発生する仕組みとなっている。メールの送信も受け取りもすべてだ。メールを一通送り、一通受け取ったら、二回とカウントされるシンプルな契約となっている。

私は月に30米ドル支払い、メッセージ100回のプランにしていたため、100回メッセージの送信もしくは受け取りが出来ていた。

 

ちょっとした緊急時、状況を知りたい相手が、救助を欲しがっている人間から情報を細かく聞けるというのは、それだけでかなり安心できる。

 

「今、カナダのアルバータ州の森の中で遭難しています。救助を呼んでください」


そのようなメッセージを一方的に送ったところで、受け取った人は困惑してしまうだろう。どれくらい緊急なのか、正確な場所は、人数は、確認したいことだらけで動こうにも動けない。

 

その点、inReachなら細かなコミュニケーションが可能だ。私も実は一度だけそういう状況に遭遇してしまい、inReachで救助を知り合いに頼んだことがあった。

そのときメッセージを受け取ってくれた相手はすぐに返事をしてくれて、何回かメッセージのやりとりをして無事救助を得ることができた。そのときの安心感といったら本当に大きかった。

 

そして、Presetメッセージ機能というのもある。Preset、すなわち、あらかじめメッセージを用意しておける機能だ。よく使うメッセージなんかを登録しておくと便利だろう。送信相手先も同時に登録することも出来る。

そしてこのPresetメッセージは完全に無料で送ることができるのだ。何回でも。100回のメッセージからも引かれることはない。

 

登録できるのは3メッセージのみだ。

  • 「これから出発しまーす」
  • 「無事に人の居るところに着きましたー」
  • 「いまここにいまーす」


などpresetメッセージにしておくと便利だ。

 

「いまここにいまーす」などは是非北極点あたりで試してみてほしい。

 

 

 

以上、inReachの機能とその魅力について説明してきた。

 

冒頭にも述べたが、この情報は2013年11月時点において、Delorme社のHPを閲覧したり同社の担当者からの情報を日本語にして解説したものであり、間違った解釈や誤訳、情報が変更している可能性がある。あくまでも参考程度に使ってほしい。自身で購入され使用される人は自身で情報を確認してから使用されるようお願いしたい。

 

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