時間がくねくねしてなくてよかった

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おすすめのノンフィクション作品

あらゆるジャンルの本をデタラメに脈絡なく読み漁るのが好きだが、その中でもノンフィクションが一番好きなので、今日はおすすめの本を紹介したい。とりあえず3冊を紹介するが、少しずつ追加していきたい。

 

 

「アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極」角幡雄介

私はこの著者の本当に大ファンで、とにかく凄い人だなとその作品を読むたびに思わせられる。角幡唯介さんの作品はおそらく全て読んでいる。自らの身体で過酷な極地旅行に出かけ、圧倒的な文章力でその世界を描き切るスタイル。冒険スキルも一流で、文章スキルも一流。当然、作品の完成度も高い。全てがこの人にしか書けない作品だ。なぜもっと注目されないのかいつも本当に不思議だ。マーケティング能力ばかりに優れた薄っぺらい作品なんかが売れていたりすると「角幡雄介さんの本を読んでみてくれ!」と大きな声で言いたくなる(し、周りにもいつも宣伝している)。エッセイも本当に面白くて、特に「旅人の表現術」というエッセイは確実に永久保存版と断言できるくらい、深い考え方が凝縮されている。とにかくあらゆる作家の中で一番好きな作家さんの、私が一番好きな作品が「アグルーカの行方」なのである。もう凄すぎて訳がわからない。それしか言えない。中身は何にも説明してないが(笑)、とにかく読んでみてほしい。

 

「西南シルクロードは密林に消える」高野秀行

この人の作品も大好きでよく読んでいる。高野秀行さんは、早稲田大学で探検部に所属していて、角幡雄介さんの先輩に当たる人だ。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も書かない本を書く」をモットーに、50歳を超えた今もバイタリティーに溢れた作品を発表し続けている。本当に憧れる生き方で、それを貫いて続けているのは本当に凄い。というかとても羨ましい。こんな風に歳を取っていきたいと思わせられる。高野秀行さんは面白い世界を嗅ぎつける能力と巻き込まれていく力が凄すぎる。この作品も、巻き込まれていく能力を遺憾無く発揮していて、展開に身を任せたワクワクするような状況がずっと続いている。高野秀行さんの人間性も、人を惹きつける大きな魅力だと思う。ぜひ読んでみてほしい。きっとファンになる。

 

「一瞬の夏」沢木耕太郎

主役はカシアス内藤というボクサーの物語だが、沢木耕太さんも登場人物として登場する。沢木耕太郎さんが確か角幡雄介さんとの対談で、こんな人生の一時期を写し取っただけで作品になるようなものは二度とは書けないと、そのようなことを言っていた。ノンフィクション作品の出来上がるアプローチは大きく二つに分けることができる。一つは体験をしてから書くことを決める作品と、書くことを決めてから取材や体験をする作品だ。そして沢木耕太郎さんは角幡雄介さんとの対談で、この作品は体験してから書くことを決めたのだと言っている。横田増生さんの「ユニクロ潜入一年」を読んで感じたことでもあるが、書くと決めてから体験をすると作品にしなければならない強引さのようなものが出てしまい、そこに純粋さが失われてしまうような気がするが、「一瞬の夏」は沢木耕太郎さんが若き日に得た体験そのものが純粋に描かれている。沢木耕太郎さんは世界チャンピオンを目指すカシアス内藤のプロモーターとして登場している。カシアス内藤のすぐ近くで沢木耕太郎さんもその人生に翻弄されながら、彼に若き日の情熱を注ぎ込んでいた。その自分も含めた物語を丁寧に記述し、一人のボクサーと彼を取り巻く人間の物語がフィクションなど及びもしないリアルさで描かれている。書くことを生業にしている人間が、偶然にもカシアス内藤という燃えるような男の物語と運命を共にすることになり、その偶然によって、決して計画的には作り上げることのできないノンフィクション作品が誕生したのだ。