時間がくねくねしてなくてよかった

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今日の英文vol.10

今日は趣向を変えて『The Great Gatsby』から。

 

様々な英文で書かれた小説がある中で『The Great Gatsby』を選んだ理由はいくつかある。まずは初めにアメリカ人が書いた文章だということ。つまり誰かが英語に翻訳したのではないということだ。次に一人称で書かれているということ。一人称で書かれていることで会話のリスニングに役にたつ。三人称だと会話を聞き取る訳には立ちづらいので。

 

小説と『TIME』などの英字雑誌との一番大きな点は英文が会話調であるということだろう。英字のアカデミックな文章に触れるのも大切だけど、実際の会話やビジネスのシーンを想定した場合、小説を読んだ方が会話が多く聞いたときにも頭に入りやすい。小説を速読できれば耳で聞いたときも追いつくことができるようになる。

 

そのような意味から『The Great Gatsby』を選んだが、何よりも大きな理由は村上春樹が翻訳しているという点にある。この『The Great Gatsby』を日本語にすることでリーディング力とリスニング力を強化できるが、どうしてもわからない箇所は村上春樹訳の「解答」を確認することでより理解を深めることができる。何よりも村上春樹の思考を辿れるようで楽しいし、原文で読めることにとにかくワクワクしている。

 

今日は冒頭の一文を紹介する。

 

In my younger and more vulnerable years my father gave me some advice that I've been turning over in my mind ever since.

 

若くて影響を受けやすい頃に父に指摘されたことがある。それは小さい頃からずっと頭の中がごちゃごちゃしているということだ→(そしてそれは私が何度も心の中でひっくり返してきたものだそれ以来2021.11.04修正)。

 

まだ「解答」を見ていないのでどれほど間抜けな日本語になっているのかはわからないが、概ね意味はあっていると思う(やはり間抜けでした、、2021.11.04)。

 

まず「more vulnerable」とあるが少し難しい。「vulnerable」は本当によく出てくる単語だが、「〜に弱い」「攻撃されやすい」「傷つきやすい」というような意味だ。その後に「mind」の話をしているのでやはり精神的に脆いというような意味となるだろう。ざっくりと影響を受けやすいという訳にしてみた。

 

最後が難しい。「I've been turning over in my mind ever since」。まず「ever since」だが「〜の後からずっと」という意味だ。「ever since」の後に文字がくるはずなので「I was born」「I was child」あたりが省略されていると考えると「生まれてからずっと」か「子供の頃からずっと」がしっくりくる。

 

「I've been turning over in my mind」は堅苦しくて文法的な言い方で恐縮だが現在完了進行形なので今でもこの人物は「turning over」しているという自覚があるということだろう。「turn over」は「ひっくり返る」という意味だが目玉焼きにも使われるのでイメージはつきやすい。この登場人物は頭の中でひっくり返り続けているということになるのだが、つまり常に思考しているような人物で頭の中がごちゃごちゃしていると訳してみた。

 

「I've been turning over in my mind」と英文で出てくるとスッと何を言っているのかすごくわかりやすいが、同じくらいの分量で日本語で表現してみようとすると難しい。しかし一文目から日本語訳するのが楽しくて仕方がない文章だし、先を読んでみたくなるような書かれ方で村上春樹が喜んで翻訳をするのが理解できる。引き込まれるというか。

 

せっかくなのでその後に出てきた文章も良かったので紹介する。

 

In consequence I'm inclined to reserve all judgments, a habit that has opened up many curious natures to me and also made me the victim of not a few veteran bores.

 

直訳:結果として、私は傾いた、ジャッジメントを保存することを、習慣、広げた多くの好奇心の性質を私に対して、また私を被害者にした、2−3のベテランの退屈とは異なる

 

日本語訳:結果として、私は決断を先延ばしにするような性質の人間となり、好奇心という(厄介な)ものまで開花させられてしまい、退屈を受け入れられない人間となってしまった。

 

「incline」は「傾く」なので、受け身だと「傾けられる」つまり「〜という性質」と訳せる。「reserve」は「予約する」「取っておく」という意味なので、全ての決断を保留にするということ。初めは「優柔不断」という簡単な日本語で済ませてしまおうと思ったが、「決断を先延ばしにするような」の方が強いというかしっくりきたのでむしろ英文そのままの調子で訳した。

 

その後が少し悩んだが「a habit」。「judgments」の後に「,」のみでつながれている。「habit」は「that」でつながれていて動詞がないので「that」以下は当然「habit」の補足説明をしたもの。「judgments」と「habit」が「and」で結ばれていれば「reserve」が「habit」にかかっているのだろうと読めるがそうではないので、「habit」はその前の文章の「I'm inclined to reserve all judgments」を言い換えたものだと予想。例えば「In consequence I'm inclined to reserve all judgments, a bad habit 」と文を完結させてさらに「bad」を付け加えるだけで文章がわかりやすくなる。

 

「victim」は「被害者」という意味なので、好奇心の前に「厄介な」をつけてもいいかなと思ったが、やりすぎ感もあるのでカッコにしておいた。ただ明らかに好奇心は厄介なものだということがこの「victim」という単語からわかる。「nature」はよく「性質」というような意味で登場する。

 

最後の「not a few veteran bores」が一番訳しにくかった。というより何を言っているのか予想するのが精一杯で「退屈を受け入れられない人間」と逃げるような訳にした。「veteran」は「退役軍人の」「古い」というような意味だ。これはもうイメージで使われているのでわざわざ日本語にするとなると難しい。「bores」は退屈の複数形だろう。「古い退屈」と訳せるがつまり「好奇心」の対義語を美しく書いているだけだろう。「a few」がさらにわからない。「2-3の古い退屈」と訳せるが、例えば「美味しいものが食べれて家族がいるだけでそれだけで幸せ」という考え方では満足できないような人間になってしまったというようなことを「a few」でさらに皮肉的に表現しているのかもしれない。「美味しいものが食べれて家族がいるだけでそれだけで幸せ」と感じられなくなってしまった私は「victim」で被害者なんだと。

 

時事問題を扱う雑誌を読むには知識が必要で、小説を読むには想像力が必要になってくるということがよーくわかった。

 

次回に続く